プロフェッショナルサポーター コラム
重要なのはインスタ映えより、コミュニティ作り
2019.4.17 UP
- 株式会社ガルテン代表/ライフスタイルプロデューサー
村上萌
層雲峡で講演をさせてもらった際にも同じことをお話させていただきましたが、これから更に「コミュニティ」という考えがキーワードになると思っています。SNSの普及と共にマスメディアの力が弱くなり、これまでは「消費者」として一括りにしていた人たちが「それぞれの生活者」として、多様な価値観を持つようになりました。会社や村など、自身が物理的に所属する場所が絶対的な存在だった時代から、SNS上で共通言語(=ハッシュタグ)を使える人と簡単に出会える時代になったのです。会社で席が隣の人よりも、前々からSNSで相互フォローしていた人との方が話が合ってしまう。自分の趣味趣向を発信できる人にとっては、とても良い時代です。
それと同時に、駅前の好立地を占領してきた銀行の支店が消え、ネット銀行へ移行したりと、物理的なことだけで成り立っていた価値は減少して行きます。そう、SNSのおかげでやってきたコミュニティの時代は、不便な場所にある観光地にとっては大きなチャンスなのです。その一例として、熊本県の黒川温泉、山形県の銀山温泉、群馬県の草津温泉など、主要都市からのアクセスに2時間以上かかる場所であっても、「行きたい温泉ランキング」に常にランクインしています。訪れた人が投稿するSNSの写真が作用していることは間違いありません。
そういった現象を目の当たりにして、不便な場所でも人が行きたいと思う場所を作る、という課題を出された時、多くの観光担当者が「インスタ映えするものを作ろう」と考えている気がします。正直私はこの言葉はかなり苦手です。美しいから写真に切り取って残したくなる、これはもう前提であって、目指す姿ではありません。大切なのは、その場所が発信するメッセージです。「何者」としてインスタ映えしているのかが重要です。先の例にあげた温泉も、それぞれ「ここに来たらどんな時間が過ごせるか」を明確にした街づくりをしているので、単なるインスタ映えではなく訪れた人たちが、そのメッセージを自分なりの言葉でフォロワーに伝えているのだと思います。
コミュニティとは、同じ言語を話す人たちが作る「輪」です。人やブランド、メディアや観光地が、その中心に位置してコミュニティを形成する場合、中心人物は、どんな姿を目指していて、そこに触れたコミュニティの人たちは、どんな体験ができるのかを示す必要があります。
上川町は、これからどんな場所になることを目指していて、遊びに来る人、住む人たちは、そこでどんな体験ができるのか。
メッセージに合わせて、イベントを考え、企画を遂行する必要があります。「インスタ映えするかどうか」ではなく、「今目指している上川町らしいかどうか」これを判断基準として、まずは中の人たちが理想の姿の共通認識を持たなくてはいけません。その考えをしっかりと固めていくことが、イベントのタイトルや企画、制作物や言葉遣いなど、あらゆることに一貫性を持たせてくれます。
地道ではありますが、それをすることがリピーターに繋がると思います。インスタ映えだけを狙っては、新規の人が来たとしても、その中にもう一度来てくれる人はほとんどいません。だけど、メッセージを理解して、楽しんでくれた人は「次はあの人を連れて別の季節に来よう」と上川町のファンになってくれるはずです。リピーターこそ、コミュニティの輪を作る上では、とても重要な存在です。
女性は、共感が得意です。相手が何をしたら喜んでくれるかを考えるのも、得意です。一人で突き進む競争の時代ではなく、それぞれの力で一緒に輪を作っていく時代。コミュニティ作りに、女性の力は欠かせません。これからの上川町は、定住者を増やすことを目的にするのではなく、物理的条件にとらわれず、上川の発信するメッセージに共感する人を増やして欲しいと思っています。そのメッセージを自分なりに解釈して表現できる女性が増えることを祈っています。